初心者でもわかる!暗号資産の所得にかかる税金の計算方法を徹底解説

暗号資産の取引で所得(利益)が出たら、納税をしなければなりませんが、納税額をきちんと計算するためには、所得がいくらあるのかをきちんと把握する必要があります。
特に、暗号資産を数えきれないほど取引して、自分がどんな取引をしてきたのかよくわからないといった方も多く、そういった方の税金、所得の計算は困難を極めます。
そこでこの記事では、暗号資産にかかる税金の計算方法についてきちんと理解を深めるため、
- 暗号資産の所得に対する税金の計算方法
- 暗号資産の所得を正確に計算する方法
- 暗号資産でどんな取引をした時に所得を計算しないといけないのか
について、わかりやすく解説をします。
暗号資産の所得にかかる税金の計算方法
まずは、暗号資産の所得にかかる税金の計算方法について説明します。
暗号資産の所得に対する税率
個人による暗号資産取引には、所得税が課されます。所得税の税率は、所得が多ければ多いほど税率がアップする「累進課税」方式で構成されています。
- 194万9,000円まで 所得税率5%
- 195万円〜329万9,000円 所得税率10%
- 330万円〜694万9,000円 所得税率20%
- 695万円〜899万9,000円 所得税率23%
- 900万円〜1,799万9,000円 所得税率33%
- 1,800万円〜3,999万9,000円 所得税率40%
- 4000万円〜 所得税率45%
所得税が最大で45%かかり、さらに住民税が10%加算されます。
なお、暗号資産の所得は、所得の区分のうち「雑所得」に区分され、雑所得は総合課税の対象となっていますので、他の所得と合わせて計算を実施します。
累進課税での税金計算の例
ここで、一つ計算の例を出してみます。
例えば、給与所得が500万円、暗号資産取引による所得が300万円とした場合、所得の合計は800万円となります。
基礎控除48万円を差し引いた「課税所得」は752万円となり、695万円〜900万円の間ですので、所得税率は23%です。
この場合、
(所得800万円ー基礎控除38万円)×0.23 ー 63.6万円 = 111.66万円
となります。
ここで、63.6万円とは、いったいどこから出てきたのかを説明します。
累進課税方式では、195万円に対しては5%、195万円〜330万円の間の135万円に対しては10%…という風に税率が計算されます。
よって、762万円に対して23%の税率をそのまま掛け算するのは、余分な税金を支払うことになりますので、63.6万円分の控除をしているということになります。
計算は少し複雑になりますが、以下のように控除額は国税庁より公表されたものがありますので、ご参考ください。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
194万9,000円まで | 5% | 0円 |
195万円〜329万9,000円 | 10% | 97,500円 |
330万円〜694万9,000円 | 20% | 427,500円 |
695万円〜899万9,000円 | 23% | 636,000円 |
900万円〜1,799万9,000円 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円〜3,999万9,000円 | 40% | 2,796,000円 |
4000万円〜 | 45% | 4,796,000円 |
参考:国税庁|所得税の税率
暗号資産の所得が発生するケースとは
暗号資産の税金をきちんと算出するためには、暗号資産の所得を正確に把握する必要があります。まずは、どのようなケースで、暗号資産の所得が発生するのかを整理します。
なお、取得価額、売却価額については、手数料がかかる取引所の場合、手数料を加味したた金額となります。
暗号資産を売却した場合
暗号資産を日本円で購入し、日本円で売却した場合、売却価額と取得価額の差額が、所得となります。
例えば、
- 4月1日:1BTCが50万円の時に2BTCを購入した
- 7月1日:1BTCが120万円の時に1BTCを売却した
このような場合、所得は以下のようになります。
120万×1BTC (円) ー 50万×1BTC (円) = 70万円(所得)
手元には1BTCが残っていますが、売却や他の仮想通貨と交換しない限りは、所得とはならず、税金は生じません。
暗号資産で商品を購入した場合
暗号資産で商品を購入した場合、取得価額と商品の購入価格との差額が、所得になります。
例えば、
- 4月1日:1BTCが50万円の時に2BTCを購入した
- 8月1日:1BTCが120万円の時に、60万円の商品を0.5BTCで購入した
このような場合、所得は以下のようになります。
商品60万 (円) ー 50万×0.5BTC (円) = 35万円(所得)
0.5BTCを日本円に換金し、そのお金で商品を購入した、と考えます。
暗号資産同士の交換を行った場合
保有する暗号資産Aを使って、他の暗号資産Bを購入(AとBを交換)した場合、「暗号資産で商品を購入した場合」と同様に所得価額を計算します。
例えば、
- 4月1日:1BTCが50万円の時に2BTCを購入した
- 9月1日:1BTCが120万円、1XRPが30円の時に、10,000XRPを0.5BTCを使って購入した
このような場合、所得は以下のようになります。
30×10,000XRP (円) ー 50万×0.5BTC (円) =5万円(所得)
XRPからBTCに再び交換し直した場合にも、同様の計算を行います。
暗号資産の分裂(分岐、ハードフォーク)によって暗号資産を取得した場合
ブロックチェーンの分岐(ハードフォーク)によって、暗号資産が分裂し、新しい暗号資産を取得した場合、取得時には所得は生じません。
新暗号資産を取得した後、その暗号資産を売却した時に、初めて所得が発生します。この時、取得価額は0円となります。
例えば、
- 5月1日にハードフォークによって新暗号資産を100単位取得した
- 10月1日に新暗号資産を1単位あたり10,000円で10単位売却した
このような場合、所得は以下のようになります。
1万× 10単位(円) – 0×100単位 (円) = 10万円(所得)
暗号資産を採掘(マイニング)により取得した場合
暗号資産を採掘(マイニング)によって取得した場合、所得が生じます。なお、取得価額は、取得した時点での時価によって決まります。
例えば、
- 6月1日にマイニングによって、ある暗号資産を10単位取得した
- マイニングした暗号資産の6月1日時点での価額は1,000円であった
このような場合、所得は以下のようになります。
1,000 × 10 単位(円) = 1万円 (所得)
なお、マイニングのために使用したPCの設備費用や電気料金は、マイニングに要した費用として、経費に計上することができます。
つまり、マイニングに要した費用が3,000円であれば、課税対象となる所得は7,000円となります。
1万円 – 3,000円 = 7,000円 (課税所得)
暗号資産をエアドロップで受け取った場合
暗号資産のいくつかのプロジェクトでは、「エアドロップ」という無料の暗号資産配布があります。
ですがエアドロップについては、国税庁からの公式の見解は明らかとなっていません。
まだ取引所などに上場していない(すなわち価格がはっきりしていない)暗号資産の場合は、ハードフォークの場合と同様に、受け取った時点での取得価額は0円になると考えられます。
一方、すでに取引所に上場している暗号資産の場合、取得価額がはっきりとわかりますので、受け取った時点で受贈益、すなわち所得の発生とみなされる可能性があります。
ICOで暗号資産を購入した場合
ICO(イニシャルコインオファリング)で暗号資産を購入した場合の税制についても、国税庁の公式な見解は明らかとなっていません。
現時点では、ICO購入した時点で決済通貨(BTC等)の時価でICO購入したとみなす(暗号資産間の交換とみなされる)方法が妥当と考えています。
(参考)暗号資産を贈与や相続で取得した場合
暗号資産を贈与や相続により受け取った場合、その暗号資産は所得税ではなく、「贈与税」「相続税」として確定申告する必要があります。
暗号資産が贈与された場合には、贈与されたタイミングでの時価に応じて贈与税がかかります。
贈与税は、110万円までであれば基礎控除の範囲内なので、税金はかかりませんが、110万円を超えた場合、累進課税方式で、贈与税が課されます。詳しくは、以下の国税庁Webページをご参照ください。
暗号資産の所得を計算する方法
前項にて、どのような場合に暗号資産の所得が発生するのか説明しましたが、実際に1年分の取引をまとめると、膨大な数の取引になっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そういった場合、一取引ごとに暗号資産の取得価額を計算するのは非常に煩雑なので、「1年間分の総所得を計算する」という形で所得を計算しても良いことになっています。
1年分の所得を出す場合に、暗号資産の取得価額を算出する方法として、「移動平均法」、「総平均法」の2つがあります。
参考として、国税庁Webページに、移動平均法、総平均法で取得価額を計算するエクセルファイルがダウンロードできますので、ご確認ください。
参考:国税庁|仮想通貨に関する税務上の取扱い及び計算書について(平成31年2月)
移動平均法での計算
移動平均法は、暗号資産を取得するたびに、平均単価を計算し直して取得価額とする方法です。
例えば、
- 4月1日:1BTCが50万円の時に2BTCを購入した
- 7月1日:1BTCが120万円の時に1BTCを売却した
- 8月1日:1BTCが120万円の時に、60万円の商品を0.5BTCで購入した
- 9月1日:1BTCが120万円、1XRPが30円の時に、10,000XRPを0.25BTCを使って購入した
- 11月1日:1BTCが130万円の時に3BTCを購入した
このような場合、
4月1日時点でのBTC取得価額は50万円、保有しているBTCは2BTCです。
9月2日時点で、保有しているBTCは0.25BTCになっています。
11月1日に新しくビットコインを購入した場合、平均の取得価額は、
(50万×0.25BTC+130万×3BTC)÷(0.25BTC+3BTC)=123.8462万円
となります。
前述したエクセルシートに入力してみると、以下の画像のように計算結果が出てきます。
総平均法での計算
総平均法では、1年間の購入時の金額に対して平均して取得価額とする方法で、簡単に取得価額を算出できる方法です。
例えば、
- 4月1日:1ビットコインが50万円の時に2BTCを購入した
- 7月1日:1ビットコインが120万円の時に1BTCを売却した
- 8月1日:1ビットコインが120万円の時に、60万円の商品を0.5BTCで購入した
- 9月1日:1ビットコインが120万円、1リップルが30円の時に、10,000リップルを0.25BTCを使って購入した
- 11月1日:1ビットコインが130万円の時に3BTCを購入した
このような場合、平均の取得価額は、
(50万×2BTC+130万×3BTC)÷(2BTC+3BTC)=98万円
となります。
総平均法で計算をする場合、各取引所の「年間取引報告書」に記載されている内容を参照して各項目を埋めることになります。
移動平均法と総平均法はどちらを使うべきか?
例で示した通り、移動平均法と総平均法で、暗号資産の取得価額が異なることがご理解いただけたと思います。売却額はどちらの方式を使用しても変わらないため、取得価額の金額が所得の金額に直結して影響します。
総平均法の方が、計算を簡略化できるものの、暗号資産は価格変動が大きいため、価格変動によっては、実際の取得価額とかなり大きな乖離が出てくる可能性もあります。
極力、移動平均法を使うのが推奨されますが、計算の簡便化を重要視される方は、総平均法を使ってもよいかと思います。
ちなみに、所得税では総平均法、法人税では移動平均法が自動適用されることになっています。
評価方法を変えたい場合は、「所得税の暗号資産の評価方法の届出手続」を行う必要がございます。
経費を差し引いて課税所得を計算する
暗号資産取引に費やした支出は、暗号資産取引の経費として、所得から控除することができます。
暗号資産取引の経費として計上できるものには、以下のようなものがあります。
- マイニングや暗号資産取引に利用するPC、スマホなどデバイス費用
- マイニングや暗号資産取引に利用した電気代
- 情報収集に利用した書籍、インターネットサービス、セミナーなどの料金
経費として計上場合、これらに該当する領収書などは、きちんと保管しておく必要があります。
まとめ
この記事では、暗号資産の税金の計算方法について解説をしました。
暗号資産の税金関係で一番煩雑なのが、取得価額の計算に関するところです。
特に、取引回数が多く、複数の取引所を使用している場合には計算が複雑になります。
税理士にお願いして計算してもらうということも可能ですが、取引の記録がないことには、たとえ税理士であっても計算できません。
- どのような取引に対して所得が生じたのか
- どの取引所を利用したのか
この辺りは最低限記録しておきましょう。また、経費として計上できるものについても記録+領収書の保存を怠らないことをお勧めします。
CONTACT
お問い合わせ・資料請求